エンジンオイルが減る原因に挙げられる、オイル上がりとオイル下がりとはどのような現象でしょうか?
この2つの現象が起こった際に現れる症状の特徴や白煙が出る原因とはなんでしょうか?
今回は、オイル上がりとオイル下がりについて解説をしていきます。
もくじ
オイル上がりとは
【出展:大車林 Weblio辞書 https://www.weblio.jp/content/オイル上がり】
エンジンオイルはオイルパンに溜められており、エンジンを始動するとクランクによって掻き(かき)上げられ、シリンダーとピストンの潤滑・冷却・洗浄・防錆・吸収を行っています。
掻き上げられたエンジンオイルはピストンの往復運動(上下運動)により、ピストンリングにて元のオイルパンへ掻き落とされます。
この様な一連の動作を繰り返し元のオイルパンへかき落とされ、通常は燃焼室へエンジンオイルが浸入することはありません。
中にはエンジンオイルが燃焼室へ進入しやすい現象があり、それはエンジンブレーキをかけた時です。
エンジンブレーキをかけると燃焼室は高い負圧になり、エンジンオイルが燃焼室へ吸い上げられようとします。
この様な場合であっても通常通りピストンリングでエンジンオイルを掻き落とし一連の動作を繰り返します。
しかし、ピストンリングの磨耗が著しい場合、シリンダーとピストンリングの間に隙間ができてしまいます。
この様な状態でエンジンブレーキをかけると、高い負圧により掻き上げられたエンジンオイルは、ピストンリングとシリンダーの隙間を通り、掻き落とされることなく燃焼室まで浸入してしまいます。
この現象をオイルが下から上がる動きになる為オイル上がりと言います。
浸入したエンジンオイルは混合気と共に燃焼(消費)してしまいます。
オイル上がりの原因
オイル上がりの原因は、ピストンリングの磨耗です。
エンジンブレーキの高い負圧発生によりエンジンオイルが掻き上げられたとしても、ピストンリングとシリンダーに隙間がなければ、エンジンオイルはオイルパンに掻き落とされ正常な動作を繰り返します。
ピストンリングの磨耗を進行させた原因は、一定期間・一定距離毎のエンジンオイルの交換を怠っり、長期間に渡り汚れたエンジンオイルを使用したことです。
このような使用方法では、エンジンオイルの効果が発揮されず、ピストンリングの磨耗が進行してしまいます。
オイル上がりになった時の処置と修理
オイル上がり現象が見られると一時的な応急処置は行えますが、いずれ修理が必要になります。
応急処置
オイル上がりの応急的な処置には、オイルの継ぎ足しがあります。
高粘度オイル(粘りの強いオイル)あるいは、添加剤の使用で処置することができます。
どちらを選んでも金銭面の差があるのみで機能面に差はありません。
走行中は急発進・急加速を控えエンジン回転数が高くならないよう心がけます。
エンジンブレーキの使用を控えることは命に関わることですのでやめましょう。
修理
磨耗したピストンリングの修理や交換には、エンジンを車両から降ろさなくてはなりません。
この修理にはエンジンのシリンダーヘッドを分解する必要があり、新品のピストンリングの交換や、シリンダー内のボーリング加工、その2つのすり合わせなど、多額の修理費用や時間が費やされます。
損傷度合いにより修理費用は変わりますが、数十万円~百万円ほどかかる場合もあります。
場合によっては、エンジンを新たに載せ替えになることもあり、廃車も含めた検討もせざるを得なくなります。
オイル上がりの対策
ピストンリングの磨耗に起因してシリンダーとピストに隙間が生じオイル上がりの原因となっていますので、ピストンリングを磨耗させない為には、決められた距離や期間に応じたエンジンオイルの交換を行うことです。
エンジンオイルの交換の目安
- 距離:5000km
- 期間:6ヶ月
オイル管理をしているからといって絶対に磨耗しないといったことはありません。
オイル下がりとは
【出展:大車林 Weblio辞書 https://www.weblio.jp/content/オイル下がり】
シリンダーヘッド(燃焼室上部)にある、カムシャフトや吸気バルブ・排気バルブは、汲み上げられたエンジンオイルで潤滑をしています。
余分なエンジンオイルは元のオイルパンに戻されますが、この時にバルブ(バルブステム)とステムシールに隙間があると、この隙間からエンジンオイルが浸入しバルブ(バルブステム)を伝ってエンジンオイルは落下して燃焼室まで達します。
オイルが上から下がる動きになることで、この現象をオイル下がりと言われます。
オイル下がりの原因
オイル下がりの原因は、バルブ(バルブステム)の磨耗・シール材の硬化・損傷を負ってしまう経年劣化によるものや、汚れたエンジンオイルに起因した傷・劣化・亀裂が現れるものや、温度変化による膨張・収縮により隙間を作ることが挙げられます。
オイル下がりは長年の使用と共に徐々に進行しますので、長期間使用している車や走行距離が多い(長い)車に多く見受けられます。
オイル上がりと同様にオイル下がりの場合も、根本的な原因はエンジンオイルの交換を怠ることになります。
一定期間・一定距離毎にエンジンオイルを交換することで防ぐことができます。
オイル下がりになった時の処置や修理
オイル上がり同様に、オイル下がりの場合も応急的な処置は行えますが、近い将来修理が必要になります。
処置
応急処置にはオイル上がりと同様に、オイルの継ぎ足しや添加剤を使用する処置がありますが一時的な処置であり、近い将来いずれ再発しますので根本的な修理が必要です。
修理
オイル下がりになってしまうと修理が必要です。
根本的な修理はシリンダーヘッドを分解し、劣化や磨耗してシール性が損なわれた部品を新しく交換しなくてはなりません。
オイル下がりの対策
オイル下がりでは、どんなにオイル管理をしっかりしていても経年劣化や走行距離が増えてくると避けられない磨耗や損傷があります。
その中でも自分でできる対策は、オイル上がり同様にオイル管理です。
シール材(シール剤)の損傷や傷などは、汚れたエンジンオイルに起因していますので、一定期間・一定距離毎にオイル交換をすることで、損傷や傷は抑えることができます。
エンジンオイルの交換の目安
- 距離:5000km
- 期間:6ヶ月
見られる症状とは
『オイル上がり』と『オイル下がり』の症状には違いがあります。
それぞれの症状の特徴について触れてみようと思います。
オイル上がりの症状
まずメーターパネルなどにあるオイルランプ(オイル警告灯)が点灯します。
マフラーからの排気ガスは、市街地走行やエンジンを吹かした時など、エンジン回転数が高回転時には白煙あるは青白い煙(排気ガス)を排気することが多く見受けられます。
アイドリングの様にエンジン回転数が低い場合には、あまり目立たない程度の白煙を排気することがあります。
エンジン回転数が高くなるにつれ、エンジンオイルも多く掻き上げられるます。
必然的にエンジンオイルの燃焼(消費)も多くなり、それに伴って白煙も多く排気されます。
また、エンジンオイルの漏れが無いにもかかわらず、エンジンオイルが異常に早く減ります。
オイル下がりの症状
オイル下がりに見られる特徴は、エンジン始動時やアイドリング時などのように、エンジン回転数が低い場合に一瞬、青白い煙が出ます。
特に白煙が排気される時は、長時間エンジンを停止した後のエンジン始動直後です。
この理由は、エンジン停止中にシリンダーヘッドに溜まったエンジンオイルがバルブを伝って燃焼室に浸入するためです。
浸入して溜まったエンジンオイルが一気に燃焼する為、エンジン始動直後のみ白煙が排気されます。
一方、市街地走行では白煙が見られることはほとんどありません。
白煙の原因とは
白煙の原因はエンジンオイルが燃焼しているためです。
エンジンオイルが燃焼しているということは、燃焼室にエンジンオイルが浸入していることになりますので、『オイル上がり』『オイル下がり』現象が疑われます。
まとめ
- オイル上がりとは、オイルパンに溜められたエンジンオイルが掻き上げられて燃焼室に浸入することです。
- オイル下がりとは、シリンダーヘッドにあるエンジンオイルがバルブ(バルブステム)を伝って落下し燃焼室へ浸入することです。
- 見られる症状には、エンジンの高回転時・低回転時やタイミングに違いはあるが、マフラーから白煙や青白い煙(排気ガス)が排気されます。
- 白煙が出る原因は、燃焼室へ浸入したエンジンオイルの燃焼(消費)です。
- オイル上がり、オイル下がりになると、どちらも修理が必要になります。
- オイル上がり、オイル下がりの対策は、どちらもオイル管理が重要になります。
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